ガマはガマでも
(閃亜鉛鉱と水晶の結晶、左下に方鉛鉱の結晶も)十七歳から三十九歳まで鉱山に勤め、その大半が山の奥深い坑内勤務だった。
よく夜道など歩く場合は、次第に目がなれて暗い中にも道筋が分かるようになるものだが、地下の仕事は明かりがなければそれこそ漆黒の闇につつまれ、方向感覚も完全になくなってしまう。
そんな現場で、前半は削岩機と火薬を使って水平に、垂直に、斜坑と坑道掘削を行い。後半はその坑道の先端でボーリングマシーンで鉱石探しを一人作業で行なった。
鉱山というところは、世間とはなれた特種社会であり、それゆえの特種用語も数多くある。
そうした中で、地下に咲く花”ガマ”と言うものがあった。
ありていに言えば、鉱物の結晶で、世間では六角柱の水晶が良く知られているが、いろんな鉱物がそれぞれの形の結晶を作るのだが、この鉱山ではまとめて”ガマ"と言っていた。
一般にガマと言えば、蝦蟇蛙か水草の蒲を想像するが、この言葉の語源は沖縄の方言”ガマ”に由来するらしい。
沖縄はさんご礁由来の石灰岩が多く、雨水の浸食などで空洞があちこちにあり、戦争中はその洞穴潜んで抵抗し、避難したようだが、鉱山のガマは地熱などの影響で、岩石中にガスだまりが出来、徐々に冷える際、ガスだまりの空間が洞穴として残る所から名づけられたようで、名付けた人は沖縄出身だったのかもしれない。
その空間に高熱ガス状の鉱物が融点の高い鉱物から結晶として張り付いて出来るものと聞いている。
これが、坑道を作るときなどに現れるのだが、天然物だけに二つと同じものがない。種類としては水晶、方解石、方鉛鉱、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱、柘榴石、、、、、とかずかずあり、その形、色具合もさまざまに見られた。
自分も、かなり採取したほうだが銀の結晶といわれる”ギントウジ”には縁がなかった。そして、これらのガマも静岡に引っ越してくる際には重荷になり、かなり処分ししてきた。
それから三十年余、今日は久し振りに一部の荷を解き、水洗いをし、日の目を見させてやったが、この間 経年劣化で酸化した金属結晶や埃でかなり見苦しくなってしまった。
たまたま訪れた知り合いが、「珍しいものだね。どのくらいになるの?」と、聞かれたが、骨董と同じ好きな人は値段をつけるかもしれないが、知らない人にはガラクタ同然。 自分の記念として持っているだけ、死んだらどっかへ捨てるもんだね、、、、と。
| 固定リンク
コメント