熱田のひつまぶし
葬儀も無事終わってなかばホッとした気分で、午後から豊田市の弟の家に向かう。
お通夜から友引をはさんでの三日間。息子を失った両親は「心の準備ができていたので、、、」と気丈にいうが、潮が引くように会葬者が去っていけば、改めて寂しさがつのって来るだろう。
自分も、雑魚寝の三日間。十人前後の人と食っちゃ寝をつづければ、大のほうが止まり腹がなんとなく重苦しい。普段のペースと程遠い生活がリズムを狂わしているのは分かる。
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そんな腹具合も、ようやく開放されたところで、名古屋の「ひつまぶし」を思い出し、ご馳走するから連れて行ってとねだる。
知立から電車で20分、熱田で下車。通りすがりの人に蓬莱軒を聞けばすぐ行き方を教えてくれる。それほど有名な店らしい。
熱田神宮の境内を突き抜け南側の鳥居を抜けて店に入る。途中「熱田神宮を拝んでから行かないかい」と言われたが、まず「腹ごしらえをしよう」と退けたが、これが大成功。
先客のカップルが店の前で迷っているみたいだったので、断って先に入ると、四人掛けのテーブルがひとつ残っていてぎりぎりセーフ。
食事の後、支払いをしているとき見たらおよそ30人ほどの人が順番待ちをしていた。お参りをしていたらここに座っていたことだろうにと、先見の明を喜んだ。
さて、「ひつまぶし」とは漢字で書くと「櫃まぶし」と書くようで、この店で商標登録を取っているとのことで他の店では使えない名前だとのことである。
商標登録で分かるようにそんなに古いものではなく、もともとは調理人が食べる賄い料理を商品化したようで明治になって作られたものだと言う。
一合ほど入る小さなお櫃にうなぎの蒲焼を小さく刻んだ物で覆っているものが出てきて、そのままで一杯。ついで、山葵と葱などを加えてかき混ぜて一杯。さらに、だし汁を入れてお粥状にして一杯。そのなかで、一番気に入った味で一杯と四回に分けて食べるそうで、一時間近くかけて完食した。
一番評判の良かったのは、二番目の山葵を加えたもので、油っこい蒲焼が山葵の香りとともにすっきりと腹に収まった。
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里心もつき、引き止めるのも振り切って帰途に着いたのはその午後、、、。
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