返り咲きのスズムシバナ
前にもらった鈴虫の鉢、九月の終わりころには羽根を広げて啼き続けていたオスが死に絶え、残ったメスも次第に数を減らし、十一月初めには最後の一匹を残して死に絶えた。
鈴虫は、放って置くと共食いをすると言うが、死んだ仲間も食べるらしく最後に残った虫以外はすべてきれいに無くなって、黒い羽が少し散らばっているだけになったが、これはひょっとすると仲間の身体を食べることが、次世代につなぐ重要な栄養なのかもしれないと思うようにもなった。
そして、最後の一匹を鉢の中で死なしてそのままにしておくより、外に放して自然に任すほうがよいような気がして、月下美人の根元においた。
腹の大きなメスだったので、上手くすれば、来年の夏には命をつないだ子供が啼くかも知れない。
と、言うことでいまは誰も居なくなった鉢の中に、いくつもの次世代が眠って来春を待ちわびていることと思う。
そんななか、麻機の山の農道でスズムシバナを見つけた。
この花はスズムシの鳴きだころに咲く花として名づけられた花なのだが、ちょうどそのころ下草刈で、この一帯がきれいに刈られた場所である。
多分これから花を咲かそうとする矢先の挫折ではなかっただろうか。
しかし、暖国の気候が幸いしてか、それとも、草の執念がそうさせたのか、今頃になって花が返り咲きに咲き出している。
そばには、やはり同じ色合いの釣鐘人参も負けてたまるかとばかり幾株も花をつけて、このあたりに秋を再現させている。
セイタカアワダチソウもそうだが、一度刈り取られても、使命を全うさせようとする生命力にはほとほと感心させられるものがある。
挫折すれば、そのまま敗退してきた自分にはとても出来ないことで、敗退の結果はあきらめ上手で、楽な道を歩く世渡りを覚えてしまった。
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