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2014年4月14日 (月)

君子蘭の赤

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鍛冶屋など火を扱う職人は、焼けた鉄の色を見て、鍛える温度を知ると言う。

赤い色から、黄色くなり青い火に変わるほど、温度が高くなることは自分もガス溶接のときなどで知っているが、その色が何度なのかは知らない。

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十六年前に亡くなった母親が残していった君子蘭が今年も真っ赤な花を咲かせはじめた。

花の咲く時期になると日当たりのよい場所に移動しているのだが、寝そべってはなお見ていると、濃い緑の葉っぱの隙間から太陽の光を受けて、金赤色から黄色まで真っ赤に焼けた鉄を思わせる色に染まった花が垣間見える。

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昭和30年ころまで大人はもちろん子供も飢えていた。

馬鹿な戦争の後遺症は「もはや戦後ではない!」と経済白書は大記したが、1ドル360円、テレビ、電気洗濯機などは高嶺の花であり、いまの人にはどう説明してもわからない世界であった。

そのころ、大人は「腹が減った」とは口に出せなかったが、子供は正直、しょっちゅう口にした。

それに対して、当時の肝っ玉母さんは「気のせいじゃろ」「夢のせいじゃ」とけむに巻いていた。

また、よそから来た学校の先生は、生徒の文集の後記にこんなことを書いていたのを思い出した。

「この学校の生徒は遠足に行ったときなど、疲れたと言う言葉の代わりに”腹が減った”」という。

軍国少年は、脚絆の巻き方は知っていたが、足の疲れはなかった。ただ ただ腹が減っていた。

鉄は熱いうちに打てとか、少年時代腹が減ってたまらなかった記憶は、今でも残り、腹いっぱいものを食べないと収まりがつかない。

今日も、身の回りに何かしら食べ物を置いて、手を伸ばして叱られている。

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