珊瑚玉に
冬珊瑚というが、春に早くも花をさかせ、七月初めから赤い珊瑚玉をつけ始めている。
子供のころ父親の行商行李のなかに、ちょうどこのくらいの大きさの珊瑚のかんざしが入っていたを憶えている。
橙色を濃くした色合いは、いまどきの真っ赤な装身具に比べると地味ではあるが飽きの来ない色合いだったと今でも感じている。
未明から、時折降っていたようだが、九時過ぎから激しく降り、天気予報を信じて門屋の畑まで言っていたが、雨脚の激しさに驚いて引っ返してきた。
庭の月下美人の根元にかろうじて残っていた冬珊瑚が、雨に打たれて生気を取り戻していた。先日来の暑さを受けて葉っぱをたびたび萎れさせていたがこの雨は天の救いとばかりに背伸びし、両手を広げているようにも見える。
激しい雨は、こんなまぁるい実にも雨粒をやどらせ、小宇宙を造っている。
名前の通り、冬に真っ赤な実をつけると餌の少ない時期なので、熟れ始めるとすぐに鳥の餌になってしまい、種が遠くに持っていかれるが、食べ物が多い今の時期はぼたぼたと実が地面に落ちても食べに来る鳥はいない。来年はあちこちに芽を吹きだすに違いないと思う。
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