栃餅 考
子供のころから食べ慣れた栃餅はここしばらくお目にかかったことがなかったので、連れ合いに笑われながらも、細かく切って少しでも長く楽しんで食べた。
むかしはどこにでも栃の大木があり、その下に行ってカマスに何杯も拾ってきた。
実を干し、皮をむき、灰汁を入れた釜で煮て、川にさらしたあと臼に入れ杵でつぶして餅にするのだが、その加減が難しく、苦くて食べられなかったり、ただの茶色い粉にしてしまったりとその年によって違った仕上がりになった。
もともと、栃の実は保存が効くところから飢饉食として、蓄えられていたものだったが、自分たちの子供のころから、その用件はなくなり正月の餅のひとつ種類になっていた。
そういえば、餅米不足ばかりではなかったが、正月の餅には草餅、粟餅など、白い餅ばかりでなく何種類も、そして、幾臼も搗いたものだったが、爺婆二人の核家族では孫にやるのも含めて、四升ほど、、、、、それも餅つき機でウインウインとこねるだけの昨今になってしまった。
”閑話休題”元に戻す。先日も書いたのだが、最近の栃餅は中に餡を入れた饅頭が多くなっているが、これは、餡の味が強すぎて、せっかくの栃の味が消えてしまっているので、自分は伸し餅以外に興味は無い。
最後の一枚、今度いつ食べることになるか分からないので、ゆっくりと味わった。
栃の風味を嗅ぎ、口の中に広がる香り、そして、ほろ苦い味わいを舌で感じてゆっくりと飲みくだす。
至福の味はこれでお終い、、、、、、、、、
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