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2021年5月30日 (日)

三界萬霊

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故郷の飛騨の栃洞鉱山の社宅群がいくつかあり、お寺が二つあった。

そのひとつ、南平には禅宗の古刹光円寺というのがあって、今では栃洞坑の閉山に伴ってお寺だけがぽつんと残されている。

管理は自分の檀那寺が管理しているようだが、ここの境内には幅1mほどのどっしりと苔むした”三界萬霊”と書いた石塔が立っている。

むかし、江戸時代のころと言われているが、このお寺の上の方に大富という谷があり狸掘りと言われる小さな採掘現場がいくつもあった。

当然山奥の事なので、飯場をいくつか立てて坑夫を住まわせていたが、ある時大雨が降り山抜けが起こり飯場を押し流し、いま立っている光円寺から100mほど下まで土石流が押し出したとのことであった。

その土砂の上に建てられた光円寺はその時の犠牲者を供養するためもあって、のちの鉱業権を引き継いだ三井金属が建てた供養塔である。

後々言われたことによると、高い賃金を稼いだ坑夫の贅沢三昧を怒った神様が災害を引き起こし、つましい生活を行っていた飯炊きの女性だけが難を逃れて生き残ったとという話しと、社宅を立てる際にあちこちから人骨を含む遺品が掘り出されてお寺に収められているとも聞いたが実際には見ていない。

このようにして、たくさんの犠牲者が出た場合、後世に残すため”三界萬霊”の塔を建てたそうで、各地に立っているが、本来三界とは人間だけでなく生きとして生きたものすべてを意味するものである。

そして、ここ静岡でもまだ苔さえもついていない新しい三界萬霊の供養塔にアマガエルが一匹張り付いていた。

しばらく見ていたが、全く動く気配がないので指先でツンツンと突っついてみたがそれでも動こうとはしなかった。

それにしても、石碑の色とは全く違い、天敵に対して目立つうえ、無防備な状態でいることに、ひょっとしてこの塔を建てたものとの関係があるかもしれないと感じさせる。

それで、「じゃましたな」と言って立ち去ることにした。

 

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